新年のご挨拶

令和2年12月28日
在トンガ日本国大使館館員一同
 皆様、新年明けましておめでとうございます。令和3年、2021年を迎えるにあたり、2020年を振り返りつつ一言ご挨拶申し上げたいと思います。
 
 昨2020年は日本にとっては東京オリンピックの開催、また日・トンガ関係においては記念すべき外交関係樹立50周年の年と、極めてエポックメイキングな年となる予定でした。残念ながら新型コロナウイルス(COVID―19)の蔓延によってオリンピックは1年延期となり、またトンガにおいて予定されていた多くの50周年記念行事もほとんどが延期ないし中止となってしまいました。
 トンガの国内情勢としては、一昨年の10月に発足したトゥイオネトア政権は国王との良好な関係の下、コロナ下においても安定的な政権運営を行っているとみられていました。ところが、昨年末に帰国した副首相兼法務刑務大臣(当時)のファオトウシア氏らによって12月9日に急遽内閣不信任案が提出されました。このため年明け早々に国会が開かれ、不信任案の審議を行い、1月中に結論を得る見込みです。2021年は総選挙(11月予定)の年であり、不信任案提出もそれを睨んでの与野党の攻防と思われますが、現職の副首相(その後辞任)が旗振り役となったことは多くの関係者に驚きをもって受け取られたところです。
わが国との関係においては、2月13日に防衛省の山本ともひろ副大臣(当時)がトンガを訪問されマアフ国防大臣と会談しました。会談では「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化に向けトンガを含む太平洋島嶼国との関係強化の重要性を述べた山本副大臣に対し、マアフ大臣からも日・トンガの防衛協力・交流を今後一層進めたい旨の発言がなされました。その後も多くの政策分野においてハイレベルでの日・トンガ間の緊密な交流が予定されていましたが、新型コロナウイルスの蔓延により、この山本副大臣の訪問以降、官民ともに両国要人の往来は途絶え、今日に至っております。
 それまで順調に進んでいたわが国の援助事業も、関係者の国外退去、その後の入国制限によって国外からの人材を必要とする事業はストップし、予定では昨年8月に竣工するはずだった全国早期警報システム(NEWS)は未完成のまま年を越すこととなりました。ただ、国内のベーシックヒューマンニーズに応えるための草の根無償(草の根・人間の安全保障無償資金協力:GGP)は、海外との人的交流が途絶える中でも着実に進捗しているところです。
 
 2021年は、50年に亘って培ってきた良好な日・トンガ関係をますます強化し強固にしていくべく、次の50年に向けての第一歩を踏み出す年となります。
 ただ、世界では未だ新型コロナ終息の糸口は見えておらず、それどころか感染状況としては第一波、第二波を上回る第三派に苦しむ国が目立つ状況にあります。そうした中にあって、地理的条件と厳格な入国制限の結果、トンガは今もなおコロナ感染者ゼロ(コロナフリー)を維持している数少ない国となっています。国内の医療体制や糖尿病等の多くのNCDの人々を抱えるトンガの現状に鑑みれば、厳しい入国制限もやむを得ないと思われます。
 しかしながら、わが国同様国内資源に乏しく、また国内の生産基盤も十分でないトンガにとって、各国との人的・物的交流は国の維持・発展のため必要欠くべからざるものであり、長引くコロナによる制約はトンガを極めて厳しい状況に追いやってしまうこともまた事実です。欧米ではワクチン接種開始という良いニュースもあります。日本を含めた各国との一日も早い交流再開を待ちながら、条件緩和となった際、各種事業や交渉の速やかな再開・進展が図れるよう、可能な努力を続けて参りたいと思っています。在留邦人の方々、トンガへの来訪を望んでおられる方々には随時現状をお知らせするとともに、条件緩和の兆しが見えてきた場合にはできるだけ早期の情報提供に努めたいと思っております。
 楽観が許される状況ではありませんが、明けない夜はないのと同様、コロナの災いも必ずや乗り越えられると信じ、この新たな年を希望と意欲をもって迎えたいと思います。本年もどうか宜しくお願い申し上げます。

 
 令和3年1月1日
 トンガ大使 宗永健作